証明写真エッセイ~命の証し

証明写真エッセイ~命の証し

命の証し (いのちのあかし ) 本田 好美様

 

たった一枚の証明写真がその人の生きている証しとなって扱われたことを、私は夫から聞かされたことがある。

世界中を震撼させた3・11東日本大震災。警察官である夫は発災と同時に宮城県へと人命救助のために派遣された。激しい余震の中で生存者を捜索したが、目にするのは多くの御遺体ばかりで、一人でも多く生存者を救出するぞと誓った夫の意気込みはやがて絶望へと変わり、御遺体安置所で多くの遺族と変わり果てた家族の亡骸と接する立会いばかりを続けることになっていったという。

発災直後、家族の安否に走り回る人々のために「御遺体確認情報」という壁新聞のようなものがどの安置所にも掲示され、「70歳くらい。男性。黒色ジャンパー。ポケットの白色ハンカチ在中」などとご遺体の特徴が書かれた文字を真剣に読む人々で溢れていた。

「おまわりさん。この写真。うちの子だったら。同じ写真なんですけど・・・・・

夫の前で6枚切りのうちの1枚が欠けた証明写真を手にした女性が目に涙を溜めていた。

安否情報の「高校生くらいの女性。ジャケットに証明写真らしい写真在中」との特徴を読んだのだという.御遺体は検死を終えた後一人一人、納棺されている。夫が亡骸を確認すると確かに証明写真らしい紙片がポケットに入っており、母親に借りた残りの写真と照合すると、顔も切り取った跡もピタリと一致した。夫はここからが一番辛かったという。

「証明写真だから娘さんは普通の表情です。だけどね。お母さん。できる限り、娘さんが笑っていたり、怒っていたりしていた顔を思い出してから確認してくださいね。」

夫は精一杯の言葉で母親に声をかけ、母親と一緒に娘さんとの対面に立ち会ったという。母親の号泣は数十分間続き、夫は傍らでそっと寄り添っていたが、その翌日に亡骸を引き取りに来た母親は、夫にこういった。

「この子が写真、持っててくれたから、家に連れて帰れます。本当にご苦労様でした。」

証明写真の役割は、その人物そのものを証明するために公的機関などに提出することが本来の目的なのだろうけれど、私はこの話を夫から聞いた時、人が人として生きてきた証のために役立つこともあるのだと思った。

証明写真は命の証し。普通の表情の後ろに、懸命に生きた証しが写っている。

 

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